針のない画鋲

なんだろな
日没する夕日を背にしながらだったり
完全に日が暮れてヘッドライトのハレーションに目を痛めながらも
街灯頼りに歩いてたり、もしくは
夜が明けようとして濃い青がグラデーションがかって白を目指す頃
暗躍するような汚れ仕事からの出退勤時

誰に告げることも誰に見られることも見咎められることもない善行
多分おそらくは善行、独善だろう
横断歩道の途中で拾ったイヤリングを信号渡りきった処の手すりに置いたり
スチール缶を車が踏みそうなとこにあったら踏まなさそうな車道のはずれに置いたり
車にはねられた動物の死骸がそこまでひどくない形状で残ってたら
脇の花壇っぽいところまで運んだり
こういう時って誰にも見られていない、むしろ誰かに見られてたらそんなことできない
動物の死骸なんて一回通り過ぎて、でも気になって戻ったら人がいるからやり過ごして
もう一回戻った時に動転しながら尾っぽなのか耳なのか変な部位をつまんで
小走りに植込みに隠すように放り込んでそのあと両手合わせて
自分でも理解できないことを祈ったり

何か行動する時、他者の目線がどうしても付きまとう
こんな時間おれしかいないのに、周り見渡してもおれだけなのに
それでも他者の目線を意識してしまう
くだらない自意識に翻弄される、これはなんだろうか
この理とき、意識する他者は神のような存在ではなく
むしろ自分に近しい他者、でも特定の人物ではない
「おれここまでやったよね、これの善悪はつかない、でも許してくれることだよね?」
なんかわかんない、でもいつも自分のやったことに
こんな感じで謝ったり祈ったりしてる

これに一番近い状態が曲作ってる時かもしれない
誰でもない、残念ながらおれに似た他者
その人の言葉を想定し汲み取りながら
この言葉はどう思うだろうって考えながら曲は作るよ